大阪版の朝日新聞夕刊に連載されている「風景を歩く」という企画がまとめられた。新聞掲載時からちょくちょく読んでいて、けっこう好きな企画ではあるが新聞の連載だけで終るのはもったいないと感じていたので、こうやって1冊にまとめられたのは嬉しい限りだ。
関西のいろいろな土地を取材したものだが、あまり知られていない歴史や風土がていねいに紹介されており、知っているはずの土地(私の生れ故郷もあったりした)も新鮮に感じられる。文章もいいが、写真もいい。ただの風景写真ではなく、その映像は確かに生きている。
それは、その土地にすむ人を描くことにより、そこの空気などもすべて読者のもとに運んでくれているからだろう。また、同じ土地でも、たぶん他の記者が取材したら違う顔が見えてくることだろう。そう、記者一人一人それぞれの思いが風景というものをモチーフに映し出されているのである。
本書は観光案内ではない。しかし、本書でとりあげられている土地に行きたくなってくる。観光ガイド以上のものであると、そう感じる。
どんな町も、そこには人が生きており、現在につながる過去がある。そのことを思い起こさせてくれる好著である。
(2004年9月16日読了)