熊本の白鳥山で山歩きを楽しんでいたイラストレーターの滝水浩一は、突如降り始めた豪雨の中で、知的で美しい女性と出会う。洞窟の中で雨宿りした二人は心を通わせあうが、互いに思いを告げることなくその場は別れてしまう。唯一の手がかりは、浩一が女性に渡した自分の名と住所が記されたリュック・カバーと、女性が落していった手帳のみ。その手帳から彼女の名が藤枝沙穂流ということを知った浩一は、手帳に書かれていた住所を訪ねてみる。しかし、そこには藤枝という夫婦はいたが、沙穂流はいない。手帳を読んでみた浩一は、沙穂流が18年後の世界に生きている人物であることに気がつく。彼女と初めて出会った洞窟を再び訪れた彼は、そこに彼女からの手紙が置かれているのを発見する。時を超えた二人の文通が始まり、浩一はやがて自分の身に起こる衝撃的な事実を知るのであった。
時を超えた男女の純愛物語である。そういうものを好む人にはこらえ切れないほどの美しさや切なさを感じられるのであろうが、ヒネクレ者の私はすれ違いに終るなりなんなりしてくれないと物語を楽しめないのであった。SFとしても、「親殺しのパラドックス」を会話の中で持ち出しながら、現在の時間を生きる男が未来に行ったらどうなるのかということについてはあいまいにしてしまっているあたり、正直残念だとしかいいようがない。
でも、こういうものが好きな人にはこたえられないのだろうな。きっと。
(2004年10月28日読了)