舞台は亨保期の江戸。出雲京四郎は廃絶された里見家の家臣の末裔である。儒家の息子に生まれ剣の道に生きている彼は、父親から重大な秘密を打ち明けられる。最後の当主里見忠義が残した財宝がどこかに隠されているのだというのだ。それを探るためには、伏姫ゆかり8つの宝珠を探し当てなければならない。その珠は、〈八犬女〉と呼ばれる8人の処女の胎内に隠されており、京四郎が処女を破ると、その珠は女壺から出てくるのだという。〈八犬女〉の近くに行くと光る数珠を手に巻いた京四郎は、彼女たちを探す旅に出る。彼を妨害するのは本多正純の末裔であり名刀村雨丸を使う剣豪、真桑利大記。そして伎楽の面をかぶり奇怪な妖術を使う奉魔衆たち。性技を磨いた京四郎は、災難にあう〈八犬女〉たちを救い出していく。
『南総里見八犬伝』の登場人物をもじったポルノ伝奇時代小説。その割には、処女をその気にさせるテクニックなどの見せ場はけっこうあっさりと流されているし、奉魔衆たちもそれほど手強い技を使うわけでもない。『八犬伝』のパロディ的な伝奇小説というと山田風太郎の『忍法八犬伝』という傑作がある。それを超えろとはいわないけれど、せめてそこに挑戦するくらいの内容はほしいところだ。幼い頃からの『八犬伝』ファンの私としては、物足りない。原典に登場する人物の名前をもじった登場人物の役割にはにやりとするところがなくはないのだが。
(2004年11月27日読了)