読書感想文


教育と国家
高橋哲哉著
講談社現代新書
2004年l0月20日第1刷
定価720円

 国会では与党が教育基本法を改定しようとしている。なぜならば、兇悪な少年犯罪は戦後民主教育のつけがまわってきたからなのだ。しかし、それは本当なのだろうか。また、改定された教育基本法にのっとった教育とは、実際にはどのようなものなのか。著者は発表されている改定案を検証し、統計をもとに「教育基本法悪玉論」の論理的なすりかえや国家の統制下における教育の危険性、そして、現実に行われている文部科学省や東京都教育委員会の施策などを実例として、論証を進めていく。
 私は教育にたずさわる者として、教育現場がなんらかの圧力により変質していくことへの危険性を感じている。ただ、それを実証するところまではいかず、自分の感性に頼らざるを得なかった。本書はその感性が間違いではなかったということをきちっとした論考で裏づけてくれた。
 「愛国心」を強制することの愚かしさ。「愛国心」という概念を使って本当に愛させたい対象は何なのか。そのことによって、政府与党は国民をどのように改造しようとしているのか。現行の教育基本法が抱える問題点も含め、著者は基本的人権のうちでも重要なものと位置付けられる「自由権」を守るためにどうすればよいのかということを、再度考えさせてくれる。

(2004年11月28日読了)


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