2004年は日本プロ野球激動の年であった。著者は日本経済新聞に野球時評を書いているそうだが、本書はその連載コラムをもとに編集されたもの。書かれている主張は十数年来著者が主張し続けていることばかり。もっとも本書ではドーム球場をほめるようなことは書いておらず、天然芝の球場を礼讃しているので、そこだけは宗旨変えしたもよう。本書の面白いところは、実は全体の構成にある。連載した時評をそのまま並べるのではなく、現在考えていることを新たに書き下ろしつつ、その予兆があった事を示すために時評を引用し、その時に有効な手を打たなかったがために現在のプロ野球界の苦境があるのだということを示してみせているのだ。
著者が書いている事……プロだけで構成した五輪チームをやめろ、飛ぶボールは禁止しろ、選手の年俸高騰は間違い、真の意味でのファンサービスというものを考えろ……は、ごく普通のプロ野球ファンならば当然と納得する事ばかりである。しかし、著者の結論はかなり悲観的である。プロ野球を愛するが故に、現状を打破するためには一度プロ野球機構そのものを解体し、全く新しいものを一から作るしかないというものである。特定の球団を中心に応援しているファンとしては、現在応援しているチームの試合を見られないのがどんなに辛い事か。解体うんぬんはかなり高い位置からプロ野球を見ているという立場からの意見であり、ここだけは一プロ野球ファンとしては実は承服しかねるのである。もっとも、著者だって心を鬼にしてそういう事を書いているのである。でなければ、言葉の使い方に何よりも気を使う著者がそう軽々しく「血涙」などという文言をタイトルに入れるわけがない。
日本プロ野球を運営する人たちはぜひ本書を読んでほしいといったところでしかたないだろう。著者の主張は昔から全く変わらず、1年でも早くその意見を取り入れていたら2004年のようなゴタゴタは起こらなかったはずなのである。つまり、著者の主張は球界首脳には全く届かず、だから著者は同じ事を毎年毎年繰り替えして叫びつづける事しかできないのである。
現在、著者が賞賛するプロ野球選手はただ一人。それは北海道日本ハムファイターズのSHINJOである。彼ほどショーマンシップという事を体現し、野球を楽しくさせる人物はいないのである。私も同感である。
(2004年12月6日読了)