読書感想文


ライトノベル☆めった斬り!
大森望・三村美衣著
太田出版
2004年l2月24日第1刷
定価1480円

 若者向けのレーベル小説を総称して「ライトノベル」という(私はいまだに「ヤング・アダルト」と呼称してますが)。本書は読書の達人2名が長年追っかけてきた「ライトノベル」について、その起源はどこにあるのか、どのような過程を経てきたのか、今どういう状況にあるのかを語りつくしたもの。とはいえ儲かりそうだからいっちょ出してみようか的なものではなくて、資料としても役に立ち、ガイドブックとしても(私の読んだ範囲でいえばもちろん)とても役に立つ。なによりも、批評抜きで内容のみを紹介などということは全くしてないのに好感がもてる。
 私も「SFマガジン」で8年間もジャンル書評をしてきたのだから、最近の動向にはうとくても、それなりにウンチクはある。とはいえ、「角川兄弟の軋轢」などの業界の流れなどについては知らなかったことも多く、実に興味深い。逆に、ピンクの背表紙が書店にあふれかえっていた「ティーンズ・ノベル」全盛期のことは(私が少し関わりをもっていたから感じるのかもしれないが)、逆に弱いという気もする。
 三村美衣と私は「SFマガジン」でこのジャンルの本を分担してやっていたから、私が主として扱っていた「伝奇アクション」の分野がちょっと弱いのは仕方ないが、ジャンル全体を幅広く網羅した上で、押さえるところをかっちりと押さえている「わかっている」人でないと作られない内容のものであることは間違いない。このジャンルに関してあまり知らない人にはちょっとわかりにくい専門用語が飛び交うけれども、入門書としてお薦めしたい。
 それにしても同時期に同じジャンルの書評をしてたというのに、けっこうジャンルに対する意識というか認識が違っていたんだなあと、多少はわかってはいたけど、改めて驚いた。こういう読み方しかできないのはどうかと思うけれど、これはまあ、立場の問題だから許しておくれ。真っ白な気持ちでは読まれんのですよ、つまり。

(2004年12月13日読了)


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