読書感想文


星々のクーリエ
陰山琢磨著
ソノラマノベルス
2004年l1月30日第1刷
定価1000円

 軌道エレベータが設置されたインド洋上のガン島。桑名真尋は軌道エレベータを守る独立国連軍の遊撃戦闘員である。彼女たちはバディAIであるアイコンを駆使してサイバースペースにも入り、有害なサイトを破壊するなどの業務をこなしていた。そこに届いた新たな命令は、宇宙から帰還してきた人造人間クーリエを確保すること。クーリエとは惑星を地球化する際に植民たちの管理をしたりする役割を背負わされ、期間が過ぎたら消滅させられるという存在である。真尋の上司を倒して逃走したクーリエを追う真尋だが、クーリエを発見した彼女は、彼の顔がある人物に似ていることに気がつく。しかし、その瞬間、彼女は全ての機能を停止させられ、気を失ってしまっていた。クーリエをめぐって繰り広げられる激しい戦闘に彼女は巻き込まれてしまったのであった。クーリエを守るべく行動を始めた彼女に、仲間である遊撃戦闘員の探査の手がのびる……。
 植民たちが異星で独立したりしないように、脳波をシンクロさせて法悦の境地に導くというクーリエの設定がユニークである。また、そのクーリエをめぐって起こる戦闘描写の緻密さや、きめ細かく作られた設定なども非常にしっかりと構築されている。
 ただ、作者が読者に読ませたいものは何なのか、それが明確に見えてこないうらみは残る。細密に構築された設定の描写がこれでもかとばかりに続き、説明的になり過ぎるのである。ということは、作者の作った閉鎖社会の精密さを楽しむべきものなのか。ところが、ストーリーは主人公である少女の戦いをメインに進めている。となると、少女とクーリエの存在意義を問う物語なのか。彼女たちの敵である独裁者はかなり戯画化されて描かれている。ということは、すぐれた文明の構築物であっても、それが閉鎖的な空間になれば腐敗してしまい愚かな人間の玩具に過ぎなくなってしまうということの風刺が狙いなのか。
 架空戦記出身の作家によく見られるのは、スペックなどを妙に細かく描かねばならないという強迫観念でもあるかのような説明的な描写である。作者もその罠にはまっているような気がする。私個人としては、文明に対する風刺という側面を強調し、もっとユーモラスに敵を描くのが作者の資質に合っていると思ったのだが。そうすると設定の説明が延々と続くように感じられてしまうのである。
 アイデアよし、ストーリーも悪くない。要は展開のさせ方なのである。作者のこれまでの作品から考えると、もっとスムーズな展開ができるはずなのだ。全てを詰め込む必要はない。少しぼかした方が読みやすいということもあるのである。惜しいところである。

(2004年12月15日読了)


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