読書感想文


20章でさぐる睡眠の不思議
ペレツ・ラヴィー著
大平裕司訳
朝日新聞社
1998年2月25日第1刷
定価1600円

 睡眠はどのようなメカニズムから起きるものなのか。人が夢を見るのはどのような仕組みになっているのか。不眠症となる原因は……。睡眠に関する様々な事象を、実証的なデータをもとに解明し、平易な文章で示したもの。
 本書が書かれた時期にはまだ一般的ではなかった睡眠時無呼吸症候群も含めて、でき得る限り最新の情報が読者に提示される。著者はイスラエルで睡眠について研究している科学者であるが、睡眠を人間がどのようにとらえてきたかという歴史から説明しているので、いってみれば「睡眠」を系統だてて知るにはうってつけの構成となっている。
 本書で強調されるのはレム睡眠である。脳の働きは起床時と変わらないけれども、筋弛緩状態になっているこの不思議な睡眠が、なぜ起きるのか、何のために起きるのか、この睡眠がもたらすものは何か。著者はひとつ一つに対して現在解明されてること全てを明らかにした上で、レム睡眠が細切れに起こる浅い睡眠や深い睡眠をつなぐために行われるようになったものであると結論づけ、そこから睡眠から覚醒への橋渡しという役割が派生し、さらには記憶の定着や脳活性の調節などの役割も担うようになっていったのだとする。
 私は「夢」のシステムについて調べようと本書を開いたのだが、それ以上の収穫を得ることができた。それでも睡眠についてはまだまだわからないことが多いという。実に興味深いテーマといえるだろう。

(2005年1月3日読了)


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