読書感想文


大阪力事典 まちの愉しみ・まちの文化
橋爪紳也監修
大阪ミュージアム文化都市研究会編
創元社
2004年12月1日第1刷
定価2300円

 大阪のの都市としての力が衰えているといわれて久しいが、果たしてそうだろうか。確かに、大阪発の企業が本社機能を東京に移したり、大阪府や大阪市が赤字財政に悩まされているという現実はある。しかし、大阪に住む人々は、行政に頼らずに自分たちの力で新たな文化や事業を立ち上げている。それは、大阪から活力が失われつつあるということに対する危機感からきたものかもしれない。それでも、未来の大阪に何を残すか、現在大阪で生きる人々の力が試されている時なのかもしれない。
 本書は、古代難波宮の時代から、元禄の上方文化華やかなりし頃、そして、近代化されていく昭和初期、さらに現在の動きを概括した上で、「大阪力」というべきパワーをトピックとして抽出し、様々な場面で活躍する人たちの手になる文章で示したものである。
 芸能・文化、水路、道路、商店街、建築物、イベント、出版など、様々な項目から大阪の過去、現在、未来をつなぐラインが見えてくる。風土、歴史に根ざし、大阪気質というべき町衆の力が浮き彫りにされる。大阪という土地を総合的にとらえる視点と、小さな街角を細密に見つめる視点が交錯する時に、「大阪力」とは何かが明らかになってくる。
 執筆者によるスタンスの違いもあり、ある人は阪神高速をとっぱらった未来を思い描けば、ある人は阪神高速に建築としての面白さを見い出すという矛盾も見られる。また、ある人はエッセイ風に書いているのに、ある人はデータ的な面を重視した書き方をしている。しかし、このごった煮な構成こそが大阪的であるように感じられる。
 大阪とは何か、大阪の抱える課題は何か、大阪の未来を支えるものは何か。本書はその答を探す案内書なのである。

(2005年1月5日読了)


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