読書感想文


蠅の女
牧野修著
光文社文庫
2004年l2月20日第1刷
定価476円

 インターネットのサイト「オカルト部」を見て集まってきたメンバーたちのオフ会が廃屋で行われた。オカルトな気分を味わおうという趣向で行われたそのオフ会で、彼らは救世主を復活させる儀式を目撃してしまう。「キリステアン」というカルト教団は、死者たちが救世主を復活させることで自分たちも復活するというものであった。その場から逃走したオフ会のメンバーたちだが、一人ずつ、「キリステアン」にとらえられ、救世主が完全に復活するための贄とされていく。「オカルト部」の主催者である蒲生は、自分たちを救うために悪魔召喚の儀式を行う。召喚された「蠅の女」は、契約を果たすため、「オカルト部」の生き残りである城島と堀井の命を守ろうとするが……。
 新約聖書をモチーフに、救世主の復活を災厄とし、悪魔を善として描く趣向が面白い。特に「蠅の女」のキャラクター造形が実にいい。味のあるキャラクターとして描き出される「蠅の女」は、善や悪を超えた魅力をふりまいている。
 ただ、全体を通して読むと、作者ならではの毒性や邪悪さがいくぶん薄いように感じられる。これは、一般の文庫への書下ろしという条件なので、作者が意識的にそうしたのだろうかという感じもする。作者のコアな愛読者には、少しばかり物足りなさを感じる人もいるのではないだろうか。
 全体に読みやすく、かんどころも押さえているのだが、作者としてはおとなしめのものといえるだろう。逆に、初めて作者の小説を読む人にはちょうどいいくらいの味つけになっているということもできるかもしれないが。

(2005年1月8日読了)


目次に戻る

ホームページに戻る