十代はじめの若者を読者に想定して、「敬語」が社会的な仕組みの中でどう位置づけられているかをわかりやすく説いている。本書は著者が前書きで書いているように、「敬語の使い方を教える本」ではない。「正しい敬語の使い方を自分で考える」ための基礎知識が本書には書かれているのだ。
敬語は、身分制度がはっきりしていた時代のものであり、明治以降、形の上で身分というものがなくなったために、言葉として非常に使いにくくなったのだと、著者は説く。そのような身分というもののあやふやな現代で「正しく敬語を使う」ということがいかに難しいか。
だから、著者は、日本社会というものの枠組みについて考えなさいと言いたいのではないかと、私には感じられた。その考えるための手がかりが「敬語」なのである。つまり本書は民主主義というものが本当に根づいたわけではない日本という国の実態を考える上で、「敬語」ほど便利なものはないということになるのではないだろうか。
著者の洞察力にはいつも驚かされるが、本書もまたその好例といえるだろう。
(2005年1月27日読了)