「死」とはなにか。人は死んだらどうなるのか。古来、宗教が、哲学が、科学が、挑み続けてきた素朴だが深い疑問に、禅僧であり芥川賞作家でもある著者が、十代の読者を対象として考察したもの。仏教的な死生観はもちろんのこと、神道やキリスト教などの様々な宗教が「死」をどうとらえてきたか、そして物理学の「暗在系」という考え方にも触れ、「死」を多角的にとらえる。そして、私たちが「死」というものにどう向き合うべきか、自分で考えられるように書かれている。
著者は本書で、「死」を否定的にはとらえない。日常の中に「死」というものを見い出し、「生」に固執するあまり自分自身の変化をも認めないような姿勢を戒める。本書で著者は「生れ直し」という言葉を使っているが、人は何かに到達した時点で、次には新しい「生」を生きるのだという考え方を提示する。この世の理は言葉や数値で全て示すことはできない。矛盾していたり曖昧なままであったりする。それをあるがままに受け止めるということの必要性が説かれるのである。
「死」があるからこそ、私たちは「生」を充実させたいと願う。充実した「生」があってこそ、迎える「死」もまた安らかになるのではないか。もっとも、物事はそう単純には割り切れないものだとは思うが。それでも、人間一度は「死」ということに対して考える時はあるはず。その時に、本書のような案内書があれば心強いというものである。
(2005年1月29日読了)