解剖、スキー、石鹸、洋食、アイスクリーム、傘、国旗、幼稚園、マッチ、電話、蚊帳・蚊取り線香、胃カメラ、万年筆……。これらの事物を最初に使った日本人は誰か。それがどのように普及していったのか。著者は、長年の作家生活で取材してきた中から拾い出したこぼれ話を再構築し、それぞれの事物に宿る物語を提示してみせる。本書の面白さは、これらの事物が本書で扱う対象として選び出された理由に、著者の愛着や思い出が色濃く反映されているところだ。どんな作品を取材している時に得られた知識か、自分はこれらのものにどういう思いを抱いているか。それを明確に書くことにより、事物に備わった物語と著者の人生とが重なってくる。そして、これらの事物が日本人にとってどのような意味を持っているかが伝わってくるのである。
(2005年1月30日読了)