人間国宝の落語家・桂米朝、落語を研究する国文学者・延広真治、41歳で落語家に入門した柳家り助、落語家出身の俳優・桂小金治、若手の浪曲師・国本武春、東京の寄席で下座をつとめる小松美枝子、講談の重鎮・神田伯龍、東京漫才の大ベテラン・あした順子・ひろし、上方落語の今後を支える笑福亭鶴瓶、新宿末広亭の席亭・北村幾夫、落語界の求道者・立川談志、芸人を愛する評論家・矢野誠一。寄席に関わる様々な人々に、幼い頃から寄席を愛してやまない著者が1年かけてインタビューした対談集。
演芸の世界の深さ、面白さ、そして芸に対する愛おしさ。どの人からも、それが伝わってくる。
芸談というのは楽しいものだ。ただし、聞き手の造詣が深くないと、ろくな話は引き出せない。小沢昭一という聞き手があるからこそ、どの人も興味深い話を聞かせてくれる。聞き手が話を引き出し、それに続いて語り手がその話を広げていく。その妙味が味わえる。
心に残った一言を書き出しておく。
桂米朝「私が昔から言うてるのは、作品と、噺家がしゃべった落語と、これは別のもんやと考えないかんと思うんです」
桂小金治「体に染み込んだものは消えないね。今でも例えば、『大工調べ』の啖呵、あんなもの何年もやってないのに出てくるんだから」
小松美枝子「昔の方は造詣が深い方が多うございましたけれど。今の会社の偉い人たちも、寄席に落語を聞きに来ればいいのにと思いますけどね」
神田伯龍「吉本のごりょんさんもそうでしたよ。『あのな、芸人というものは遊びなはれ。遊ぶのはよろしおすけどな、ただ遊んだらあかんねん。一人の女を二度買うたらあかん。うんとおなごさんを買いなはれ。かたぎさんに手を出したら一緒にならなあかん。どんどんおなごさんを回んなはれ。そうすればあんたが看板をあげたら女がみんな来てくれる』と」
芸談は、やっぱり、いい。
(2005年2月7日読了)