惑星統一を果たし、星外に対しても攻めていこうと目論むレンカ帝国の首都を災厄が襲う。激しい地震で帝都は壊滅状態になる。首相をはじめとする政府要人も、軍部首脳も、皇族もみな地震の被害にあい死亡。高帝は行方不明。大量の死傷者が出る中、ジャルーダ植民地総督シマック侯のもとで行政の何たるかを学んだ官僚、セイオは帝都庁の都令シンルージ男爵と対立しながらも復興に向けての施策を着々と実行する。しかし、陸軍が戒厳令を出し、生き残った議員のサイテンも混乱に乗じて政治の主導権を握ろうとする。元老クノロック公のアドバイスで、セイオは離宮にいて無事であった内親王スミルを帝都に呼び返し、摂政位につける。崩壊した帝都を復興するのは誰か。本当に再興することができるのか……。
全3巻の1冊目だが、本書では甚大なる被害の状況と、そこで起きる人々の動きが描かれるのみで、本格的な復興が始まるのは次巻からということになる。だというのに、本書は読み手をひきつけて離さない。
それは、災害というものに対して決して安直な姿勢で臨んでいないからである。人の命が奪われることの重み、人の生活が失われることの重み、それを十分理解した上で書かれているからである。
そして、非常時にこそ現れる人間の残酷さに目を背けることがないからである。
本書のモデルは関東大震災であるように思われる。首都を襲う災厄に加え、差別からくる異民族への虐殺などの描写からそれがうかがわれる。ただし、本書の場合は災害の規模はかなり大きくしてある。ある意味、シミュレーション的な要素もあるのかもしれない。
帝都復興に向けて、野心と愛憎がどのような展開で描かれるのか。次巻以降が楽しみでならない。
(2005年2月12日読了)