読書感想文


夢と欲望のコスメ戦争
三田村蕗子著
新潮新書
2005年3月20日第1刷
定価680円

 女性が化粧品を購入する際に、規準となってきたものは何か。それは時代によって変遷する。例えば「美白」。古くは白粉であった、しかし現在ではUVカットでシミやそばかすを作らないようにするものが求められる。例えば「口紅」。紅をさしていた時代からナチュラルメイク、そしておちない口紅と女性の要求が変化する。それらは化粧品メーカーの戦略によって変わっていったということもあるが、その要求をみたせるだけの質、あるいはブランド等によるイメージにより、メーカーが需要にふりまわされる場合もある。
 本書は、化粧品をマーケティングの視点からとらえる試みである。ロマンティストであり、かつリアリストでもあるという女性の欲求を満たすために、化粧品メーカーがどのように戦略をたててきたか。著者は本書でそれを男性に理解しやすいように解き明かす。
 だから、女性にとって関心の深いと思われる色の種類などの具体的なデータは本書では扱われていない。あくまで、化粧品の流行の大きな流れをとらえていくという作業なのである。
 したがって「流行の変化によってもたらされた化粧というものの質の変化」というような掘り下げ方はしていない。あくまで表面に現れたものを整理して提示するというスタイルをくずさない。むろん、それだけでも様々な発見はあり、未知のものに対する好奇心は十分に満たされる。だが、せっかくここまでまとめたのだから、さらに深く鋭く分析していけば、非常にユニークな視点で書かれた社会学という評価も得られるだろうに。

(2005年3月23日読了)


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