読書感想文


勉強ができなくてもはずかしくない 1 どうしよう…の巻
橋本治著
ちくまプリマー新書
2005年3月10日第1刷
定価680円

 ケンタはお菓子屋の息子で、幼稚園から小学校に入学する。お母さんから「学校は勉強するところだ」といわれたケンタは、その言葉を素直に受け取る。近所の友だちが同じクラスにいなかったこともあり、クラスに友だちができないまま、ケンタは学校では委縮したまま過ごすことになる。また、お母さんが家で勉強を見てくれる時は、とても厳しい上に、友だちと遊ばないと不機嫌になる。ケンタは学校が嫌いになっていき、お菓子屋の手伝いなどに自分の居場所を求めるようになる。そんなケンタの楽しみは、お菓子屋の支店でおじいちゃんがくれたお菓子のおまけの本であった。本を読む楽しみを見つけたケンタに、学校生活でも少しずつ変化が起き始めていた……。
 教育をテーマにした自伝的小説ということだが、固定観念のある母親の言動に縛られてしまい、委縮してしまった少年の心情が痛いほどにつきささってくる。学校で本当にすべきことは、単に勉強だけでなく、社会生活を営むために人間関係をどう作っていくかを学ぶことではないかという問題提起がなされている。ただ、それは声高に叫ばれるのではなく、主人公の心情を通してさりげなく提示されているのである。
 自分の居場所が少しずつできつつあるケンタが、どう成長していくのか。次巻以降が楽しみである。

(2005年3月24日読了)


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