読書感想文


プロ野球ユニフォーム物語
綱島理友著/綿谷寛・絵
ベースボールマガジン社
2005年4月1日第1刷
定価7000円

 1921(大正10)年に最初の職業野球団「日本運動協会」が設立されて以来、2005(平成17)年に「東北楽天ゴールデンイーグルス」が結成されるまでの、全てのプロ野球チームのユニフォームのデザインを調べ、マーク、ロゴ、色から、ボタン式かプルオーバー式か、ベルト式かベルトレスかということまで、同じユニフォームのマイナーチェンジの分までも調べつくし、イラストでその全てを再現した大著である。
 ユニフォームは球団別年代別に配列されている。だから、現在存在しているチームが、どういう系譜をたどって現在にいたっているのかという球団史もここには含まれる。さらに、大正時代の「日本運動協会」や、戦後すぐに作られて1年で消えた「国民リーグ」、詐欺同前のグローバル・リーグに参加し尾羽打ち枯らして米国から帰国した「東京ドラゴンズ」など、現在のプロ野球機構とは別に作られたチームのユニフォームや、日米野球だけのために作られたユニファームまで、全てが網羅されているのも本書の凄いところである。つまり、現在のプロ野球機構だけにとどまらない、日本の「プロ野球」全ての歴史が本書にはユニフォームを示すという形で提示されているのである。
 著者は戦前のチームのユニフォームを調べるために数多くのプロ野球OBを取材し、白黒写真しか資料のないユニフォームの色まで性格に再現してみせた。白黒写真を解析し、その写り具合の濃淡から色を割り出すという作業もしている。
 昭和初期のモダンなデザイン、戦後の物資不足の時代の苦肉の策、各球団のそれぞれのポリシー、さらにはユニフォームのデザインが変更される際の事情から導き出されるフロントと監督の関係など、ユニフォームから見えてくる「文化」が本書にはつまっている。まさに「労作」と呼びたい。
 徹底した調査とていねいな検証。プロ野球に関する第一級の資料が完成したことを喜びたい。そして、今後は新しいデザインのユニフォームが使用されるたびに本書に追加していけばいいのである。これだけの偉業を成し遂げた著者と画家、そして編集者に敬意を表したい。

(2005年3月31日読了)


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