戦前から戦後にかけてのプロ野球激動の時代を生きた男たちを描いたオムニバス短編小説集。水原茂と三原脩のライバル物語から始まり、藤村富美男と若林忠志の大阪タイガース、そしてセ・パ分裂に関わった阪急球団代表村上実とロビンスのオーナー田村駒治郎の動き、分裂後、セ・リーグ最初の優勝監督となった小西得郎と物語はつながっていく。
作者得意の人物ドラマである。歴史上の人物を描写するのと同じ手法で、作者が生きた同時代のプロ野球選手や関係者を、さまざまな事件を軸にドラマティックに描き出している。ドキュメンタリーの手法ではなく、あくまで小説として描かれているため、内面描写などがまるで当人のそばで取材していたかのようにリアルである。作家としての想像力で現実にあった事件を再構築し、人物像を浮き上がらせる。
手練れのわざと言っていい。小説を読む醍醐味がここにある。
また、2004年の球界再編騒動と重ね合わせて読んでみると、太っ腹で野球を愛するオーナーが現在の球界にはいないことがこの騒動を生んだということを感じさせたりもするのである。
(2005年5月5日読了)