朝日新聞政治部記者の手による、「自由民主党」論。
自民党の歴史を手際よくまとめ、この政党が包含していた奥行きの深さが年を追うごとになくなっているという指摘がなされる。少ないページの中に、バランスよく政策の変遷やスキャンダルの歴史、党内での成功者や雄途虚しく倒れた者まで広い範囲のトピックをカバーしている。政治史に関して興味を持ち始めた学生や、新たに政治について知ろうという若い読者には恰好の入門書といえるだろう。
ただ、同様の内容のものを本書よりも前に何冊か読んでいた場合、問題点の掘り下げ方や自民党ならではの「毒」の魅力の描き方などにいくぶん物足りなさを感じるのではないか。まさしく本書は入門書であり、ここから類書をどんどんと読んでいくためのきっかけとなるべき一冊といえるだろう。
ところで、講談社現代新書というレーベルは、本書のようなテーマのものであれば、かなり専門書に近いスタンスのものが刊行されていたように思うが、装丁が新しくなったせいか、後発の新書シリーズの影響からか、読みやすくわかりやすいものが増えてきたように思う。マニアックなテーマを独自の切り口で追うシリーズとして長年愛読しているのだ。そういうカラーまでなくしてしまわないように願いたいものである。
(2005年5月30日読了)