第10回電撃ゲーム大賞受賞作。
ある日突然、謎の隕石が地球上の多くの都市に飛来した。それを目撃した大多数の人間はたちまちのうちに塩と化してしまったのである。両親を失った少女、真奈は、暴漢たちに襲われているところを秋庭という男に助けられ、そのまま彼の住まいで暮らすことになった。彼女たちの前に、「塩害」で恋人が塩と化した青年や、塩と化す前に脱獄してきた若者などが現れ、そして消えていく。ひっそりと暮らしていた2人の所にやってきたのは入江と名乗る自衛官。実は秋庭は元自衛官で、入江は秋庭とともに「塩害」のもととなり現在も被害を広げ続けている隕石の正体を推測し、これを消滅させるために秋庭の復帰を目論んでいた。自己中心的な入江、密かに愛を育んでいた2人。隕石消滅作戦の影で、静かに人間ドラマが進んでいく。
上質のラヴ・ストーリーである。「塩害」という設定は、筒井康隆の傑作「佇む人」を連想させるが、さらに叙情的で、感傷的である。
優秀な自衛官と高校生の少女という普通なら考えられないとりあわせの2人が、滅びゆこうとする世界の中でお互いの居場所を求めあうという、ただそれだけを描きたくて作者はこの設定を考え出したのではないかと思わせる。それほど、結晶化した「死の街」のイメージは鮮烈である。
難点がないではない。隕石が人間を塩と化すメカニズムはいくぶん説得力に欠け、また、一雨くればこの隕石は溶けてしまうのではないかと思うのだが、そのあたりに関する説明も不足していて、小骨がのどに刺さったかのようなひっかかりが残ってしまう。
それでも本書が印象に残るのは、やはり登場人物たちの人物造形と、細やかに描き出される心情の描写が優れているからだろう。新人のデビュー作としては、特筆すべき筆力なのである。
(2005年7月7日読了)