現在、テレビを中心にした「お笑いブーム」なのだそうである。著者によると、これまでの「演芸ブーム」「マンザイブーム」などと違うところがあるのだそうだ。それは、「お笑い芸人」の地位が高くなったこと、これまでの演芸専門のプロダクションだけではなく、大手の芸能プロ(渡辺プロやホリプロなど)が「お笑い部門」を設けて積極的に「お笑いタレント」の育成に努めていることなどがその理由としてあげられている。
それだけに、「お笑い芸人」や「お笑いタレント」をめざす若者はかなり増加しており、その分競争も激しくなる。本書は、そのような若者を対象に、現在の「お笑い」の世界がどのような状況であるかということを概説し、求められている人材や、芸人となるためにはどのような努力が必要であるかを説いている。
そういう意味では、本書は単なる「就職読本」ではない。なにしろ、喜味こいし、中田カウス、月亭可朝などの芸人中の芸人にインタビューしたり、吉本興業やナベプロ、日本テレビといったスカウトする側の本音も聞き出しているのだから。これだけ厳しい世界に、安易な気持ちで入ってこれるかと、挑戦状を叩きつけているようなものである。
本書の価値は、2005年の段階における芸人の世界の状況を、なるべく性格に記録してあるところにある。つまり、後年、2005年の「お笑いブーム」なるものがどういうものであったかということを調べる時の貴重な資料になっているのである。むろん、著者にそこまでの意図があったかどうかは不明ではあるが、本書の巻末に掲げられた「芸能事務所・芸人養成所一覧」だけでも、資料的に高い価値がある。
同時代を記録したものの方が、回顧録よりも正確な資料となり得ることが多い。しかも当事者ではなく、第三者の視点で書かれているのだから、客観性もある。さらに、「テレビ芸」と「舞台芸」の違いなど、現時点ではっきりさせておきたいことが的確に書かれていることも本書の重要なポイントであろう。
(2005年8月12日読了)