直木賞作家で経済評論家、「お金の神様」と呼ばれる著者が、若者向けに「お金持ちになれる人」とはどのような人かということを解説したもの。
経済観念を発達させるということが大切だというのが基本方針としてあり、まず種ゼニをためてから、それをどのように増やしていくかということの概略が示される。貯蓄したら、それを不動産や株式などの有価証券に投資すること、払えるあてもなく簡単に借金をしないことなどが説かれる。
というように内容をまとめると、本書は拝金主義を奨励するというようなものと誤解されるかもしれない。しかし、本書はそうではない。「お金持ちになる」という具体的な目標(しかも多数の人に関心のあること)を掲げてみせ、それをエサに経済の仕組みというものを理解させるという巧妙な仕掛けが施されていると考えるべきだろう。
不動産の売買にしても、株式の売買にしても、どこまでを歯止めとすべきかもちゃんと書かれている。バクチを打つようなことを奨めたりは絶対しないのである。
経済のとらえ方が若干現在の状況と合わないのではないかと思われる部分もなくはないが、経済というものの本質的な部分はしっかり押さえられているので、それを問題視するほどではないだろう。
中高生向けの「経済読本・基本編」というところだろうか。経済というものについてどのように中高生に伝えていくか、大きなヒントになる一冊である。
(2005年8月18日読了)