タイガースチーム創設70周年を記念して、大阪のスポーツ紙で長年執筆をしていたベテラン記者たちを中心に、タイガースの話題をコンパクトにまとめた1冊。ただ、記者たちが自分自身で見てきたことが話題の中心なので、特に戦前や1リーグ時代に関する記述が少ないように思われる。
「伝説」となった選手たちのエピソード。1985年と2003年の優勝時の話題。名選手、外国人選手、名脇役にまつわる話。背番号に関する物語。そして2005年のペナントレースについて。
年代やとりあげる人物にかたよりはあるが、あまりとりあげられたことのない外国人選手のエピソードが含まれているのは珍しい。ただ、ベテラン記者たちのとりあげ方は、長年彼らの文章になじんでいる私には「またこの書き方でこの切り口で……」と思ってしまうところが多かった。
さらに、手馴れているせいか、記憶に頼って事実確認をせずに書かれていることで、なぜこんな間違いをしたかと思うような部分もある。吉田監督が胴上げで裏返されたのは日本シリーズ優勝の時のことなのにリーグ優勝の時に裏返ったことになっていたり、田淵がドラフトでタイガースに指名される前にジャイアンツが島野投手を指名して田淵が怒ったことになっていたり(実際は、ジャイアンツの前にタイガースが田淵を指名し、ジャイアンツが島野を指名したのに対して星野仙一が怒った)と、私のような一ファンでも知っていることを間違うというのは、信じられないことだ。
このメンバーでこの厚さならば、もう少し充実したものになっていたと思われるが、いくぶん物足りなさが残った。このような形の新刊よりも、近藤唯之の『阪神サムライ物語』を復刊してみてはどうだろうか。私はタイガースの球団史をあれで覚えたようなものだからね。
(2005年8月27日読了)