地政学から世界史を読み解き、ナポレオン戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦、冷戦、そして湾岸戦争以降のそれぞれの状況を概括する。そこから見えてくるものは、政治主導で行われた戦争が、軍部のリードによるものに変質し、そして「核兵器」の登場以後は政治が再び戦争を導くものだということである。
著者は、政治家が「戦争」についてしっかりと学ばなければ戦争を防ぐことはできないと力説する。政治の延長として戦争がある。政治家が見識をもっていなければ戦争は防げない。まさしくその通りである。
著者は内陸国家である中国や北朝鮮に対して海洋国家である日本はアメリカ、そしてオーストラリア、インドとの同盟を強め、外側から囲みこむことを肝要とする。また、ゲリラに関しては政治の力でゲリラのもととなる民衆に対して善政をしき、不満を解消するのが最良の方法だと説く。
一つ一つの説に説得力があり、読み進むうちに集団自衛権の重要性に気がつかされる、といいたいところだけれど、現在の政治家たちのままで日本が集団自衛権を認めてしまうことの危うさを考慮に入れないでどうするのか。政治家たちの不勉強を力説しながら、不勉強な政治家の玩具になりかねないものを今すぐにでも認めるべきだというのは、いささか矛盾があるように思われる。中国や北朝鮮の脅威を分析しているうちに論が先走りしたということではないかと思うのだが、どうか。
防衛というものを考える時、軍事だけを考えるのではいけないと説きながら、政治的に中国や北朝鮮を包囲していくという手段についてまで言及できなかったところに本書の限界があるのかもしれない。しかし、戦争というものに対する見識をしっかりと見すえるという点では、本書は非常に面白く、示唆に富むものであると思う。
(2005年9月20日読了)