中国・韓国が日本政府に対して「正しい歴史認識」を要求し、たびたび謝罪を求めるのは、政治的な意図があってのことである。これらの国が謝罪を求める「日本の侵略行為」は、実際は満州、朝鮮の近代化をすすめ、海賊などの根拠地でしかなかった台湾に産業をもたらしたものだったのだ。中国・韓国は「日本の侵略行為」がなければその後の繁栄はなかったのである。日本政府はいたずらに謝罪を重ねるのではなく、毅然とした姿勢で自分たちの歴史の正当性を訴えるべきである。
台湾出身の評論家が様々な著作で訴えている内容をコンパクトにまとめたもの。タイトルや目次の見出しはかなり過激で、内容的にも両国に対し攻撃的である。
私はかねてから同じことについて歴代の首相たちが同じような謝罪をいちいち行っていることに対しては疑問を抱いていた。何度謝ればよいのか、何かというと以前謝りもし援助などで誠意を示しているのにそこまでしつこいのはいささか非常識ではないかとも思っていた。本書で示される謝罪要求に関する問題点については納得できるものではあった。
しかし、だからといって戦前の日本軍の行為を無条件で肯定し切ってしまう姿勢には極論めいた論理の飛躍を感じさせるし、対立をあおりたてるような筆致にはそれはそれで違和感を覚えるのだ。
多角的に歴史を捕らえるためには、こういった視点のものや史実を冷静に分析したもの、日本軍の行為を徹底的に否定したものなどを読み比べ、バランスの取れた歴史感覚を身につけていくことが必要だと思う。そのためのテキストの1冊としては本書が示唆する内容は傾聴に値するし、本書に対しても冷静に批判を加えつつ読み解くという姿勢が必要なのではないだろうか。
(2005年9月22日読了)