読書感想文


大阪弁の秘密
わかぎゑふ著
集英社文庫
2005年11月25日第1刷
定価429円

 大阪人が日常によく使う言葉を中心に、大阪弁の魅力をちりばめたエッセイ集。初出が携帯電話のサイトなので、項目一つずつが短くて読みやすく、かつ楽しく書かれている。
 とりあげられた言葉は「しゃあないやんけ」「あほちゃう!」「なんでやねん」「あかんたれ」「まいど」「かんにん」「どついたろか」「しんど」「ぼんぼん」「どないだ?」「ほな」「家に帰って屁こいて寝るわ」「べっぴんさん」「いちびる」「けったくそ悪い」「けったい」「いらう」「なおす」「わけわけ」「てんご」「ぼちぼち」「ぬくい」「せわしない」「あかん」といくつかピックアップしただけでも大阪での日常生活がすぐに浮かんでくるような言葉ばかり。
 著者はこれらの言葉の意味を簡単に説明したあと、どういう場面でどのように使用するのかを例示し、これらの言葉が発せられた時の周囲の反応やら自分自身の思い出やらをユーモアたっぷりに描き出す。
 私は京都出身なので、いくぶんなじまない言葉もなくはないのだけれど、現在大阪に在住していると耳にしやすいことばかりである。言葉の中から大阪の生活文化が浮き彫りにされ、大阪人の気質が明らかになる。そこで語られる大阪世界の豊かなこと!
 索引がついていたら辞書のようにも使えただろうに、それがちょっと惜しいところか。まあなんにせよ、大阪や関西の人間にとっては自分たちのよってたつところがはっきりするし、それ以外の地域の人たちには大阪文化というものを理解する入門書になるというような一冊である。
 それにしても著者の簡潔にして必要なことをちゃんともりこんだ文章の心地よく面白いことときたらない。鋭い人間観察力にも注目したいところだ。ユニークな大阪本がまた一冊加わった。

(2005年11月21日読了)


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