1976年に自民党から独立した河野洋平らの「新自由クラブ」。1992年に細川護煕が立ち上げた「日本新党」。1993年に武村正義らが自民党から独立した「新党さきがけ」。同年に小沢一郎らの自民党からの大量離脱でできた「新生党」。細川内閣と羽田内閣瓦解のあとを受け、新生党、日本新党、公明党、民社党などが大同合併してできた「新進党」。本書はこれら4つの「新党」の成立から崩壊までを、当時の政局をていねいに解説しながらすべての経緯を記したものである。
政治ジャーナリストらしく、著者はその時点での政治家たちのコメントを随所にさしはさみながら、新党結成の理由から解散の原因、そしてそれぞれの政党に所属した人々のその後の異動までを、きっちりと綴っていく。
そこから浮き上がってくるのは、自民党と社会党の長期にわたる55年体制の行き詰まりが「改革」を求める世論を生み出し、それに突き動かされるようにして「新党」が成立するということである。特に、自民党内での田中角栄による支配の影響が、どの新党にもあるということが本書からあぶり出されてくる。
著者の「新党」のリーダーたちに対する視線は厳しい。長期的なビジョンや戦略を欠いた集合離散に対する批判というものが、本書からは感じ取れる。一過性のものであるから、「新党」なのではないかと私は思うのだが、本書で綴られる「新党」の姿は、私のそういう思いに裏づけを与えてくれるように感じられた。
ただ、本書で強調されるのは政治家の力関係からくる集合離散であり、政策に関しては触れられる分量がいささか少ないように思われる。紙幅の関係もあるのだろうが、政治を扱っているのだから、政策というものがそれぞれの新党にどうかかわっているのかも重要なことだと思う。いや、これら「新党」の興亡は政策とは関係ないところで行われるのだという著者の思いがその分量に反映しているのだろうか。
ところで、文中に「この後のことは読者ご承知のとおりである」と書いてすませているところが何ケ所かあったが、本書は雑誌の連載ではないのだから、書物として10年後に読まれるという可能性を考えたら、ちょっと不親切であるように思われる。現在の出版事情から鑑みて、数年で品切れ絶版になるだろうという気持ちが著者にはあるのかもしれないが、このような資料的にも意味のあるルポルタージュは、絶版の後もけっこう長期間図書館や古書店で研究者の目にさらされるだろうから、そこらあたりを考えて1行でよいから「この後」について触れておくのがジャーナリストとしての責任というものではないかと思われるが、どうか。
(2005年12月11日読了)