読書感想文


学校を出よう! Escape from The School
谷川流著
メディアワークス電撃文庫
2003年6月25日第1刷
2003年11月20日第5刷
定価590円

 僕には妹がいる。妹は双子で、若菜と春奈。ところが春奈は6年前に交通事故で亡くなってしまった。それなのに春奈はなんと幽霊となって僕と常にいっしょにいる状態。僕と若菜は超常能力を一時的にもつ子どもたちを収容する第三EMP学園という学校に入学させられてしまう。そういった能力をもつ者が集まっているだけに、寮や学校の中にはおかしな連中がいっぱい。ある日僕は生徒会長に呼び出される。校外で起こったおかしな現象の現場を検証してほしいというのだ。さらに、現場検証にいった僕の前には学校に収容されていない超能力少年が出現し……。
 ペダンティックなギャグを多用した語り口や、高校生なのに不思議に落ち着いている主人公など、作者らしさは長編第2作である本書にもよく現れている。
 ただし、エスパーを隔離した学校、家族の霊にとりつかれた主人公、常軌を逸した人格の人たちというありがちな設定の中で物語をふくらませるというのはやはり相当の力量を必要とするのだろう。作者はありきたりな退魔ものの体裁はとらず、SFとしてこのありがちな設定を料理しようとした。だから、いささか強引とはいえ、作品全体としてはありきたりなものにはなってはいない。どうしても謎の解明の部分をほとんどセリフで説明してしまうということになってしまい、全体の流れがあまりスムーズでないのが残念だ。
 ラスト近く、幽霊の妹とともにいることを望むか、生きている方の妹とともに日常生活に返るかを選びとらねばならないというあたりの、主人公の心情描写には心を動かすものがある。ここが空疎にならないようにするところに、作者の力量を評価したい。

(2006年7月1日読了)


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