読書感想文


食欲礼賛
安藤百福著
PHP研究所
2006年6月19日第1刷
定価952円

 インスタントラーメン産みの親である著者が、自身の〈食〉に対する思いを綴ったもの。
 最初に書かれている「チキンラーメン」開発のエピソードはこれまでも様々な書き手によって伝えられている通りで、特に目新しいことは書かれていない。読みどころはそこではない。とにかく〈食〉というものを著者は追求するのである。日本国中に出かけ、その土地に伝わる料理を徹底的に食し、それがなぜ現在まで伝わっているかを著者なりに解読していく。そこにあるものはアジア一帯の〈食〉に対する愛情である。特に麺類に関するこだわりはさすがインスタントラーメンという食品を発明し、世界中に広める根本を作った人物だけのことはある。
 著者のインスタントラーメンに対する誇りは揺るがない。どんなすぐれた食品の話も、著者が産み出したインスタントラーメンへの愛情にはかなわないのである。
 本書は、いわば〈食〉の豆事典である。様々な食品に関する知識がつまっている。しかも、著者に食通ぶった気取りがないので、素直な気持ちで読める。一代で世界の〈食〉に影響を与えた人物だからこそ、その〈食〉に対する姿勢は謙虚なのである。
 食べ物の話が大好きな人には面白い本だろう。しかし、ここまで〈食〉に対するこだわりのないものにとっては、著者の情熱が届かない場合もあるように思う。90歳を超えた著者の筆致が淡々としているのは、ある意味当然ではある。ただ、その裏に秘められた情熱は、とてもそのような老人のものとは思われない。そう考えると、これはすごいことである。

(2006年7月4日読了)


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