著者は障害児の施設職員を経て、現在は大学で研究を進めている。著者の基盤となっているのは、施設職員時代の経験である。
自閉症児の特徴は他者とのコミュニケーションをとりづらい、カレンダーや電車の駅等への徹底的なこだわりなどがあげられる。このこだわりは、一定の傾向をもっている。それは、安定していて動かないところにある。自閉者は、急激な変化についていくのが難しく、状況に応じた対応をとりづらい。
しかし、我が身を翻ってみた時どうだろうか。いつものようにしようとした時に手順が違うと不安になったり癇癪をおこしたりすることはないだろうか。著者は、自閉者は、そういった人間誰しももっている安定を求める精神的な作用が特別に強いものだと論じる。
しかし、これまで医療や教育ではこういった特徴を特別なものとみなし、いわゆる「健常者」とは全く違った精神構造としてとらえてきた。著者はそういう姿勢こそが自閉的であると批判する。
その上で、著者は自閉者に対する支援はどうあるべきかを考えていくのである。「裸の大将・山下清」や「レッサーパンダ帽子殺人犯」などの事例を分析し、自閉者に対する理解を進めていく努力の重要性を説くのである。
私が経験的に知りえた自閉者に対するとらえかたは、著者のスタンスに非常に近い。したがって、本書は納得させられることが多かった。本書を読んでいただくことで、自閉者に対する考え方が大きく変わる人もいるのではないだろうか。
(2006年7月16日読了)