著者は上方の落語家。兄のノリオは重度ダウン症の障害者である。
本書は、著者から見た兄ノリオのことを軽妙に、しかし誠実に書いた自伝的エッセイだ。障害者との共生と簡単にいうけれど、著者は好むと好まざるとに関わらず「共生」をずっとし続けなければならなかった。落語家になり、兄となかなか会えなくなったこともある。兄ノリオは、父の死と弟の落語家入門とが重なり、精神的に不安定になった時期もあったという。
著者は、兄のことをはっきりと「あほ」という。そして、「あほ」は「あほ」で、いなければならない存在なのだと綴る。兄弟ならばこそ受け入れられる「障害者」という存在。しかし、それを外面を飾ることなく飄々と綴る著者の文章には好感が持てる。
阪神淡路大震災のところでは、泣いてしまった。命があるということは、なによりも大切なのだと感じさせられた。
障害者を自然体で活写した好著である。落語家らしい笑いに乗せ、「なんやようわからんがけったいな兄」への幼い頃からの愛情を見事に伝えてくれているのだ。
(2006年7月16日読了)