独島問題、教科書問題、首相の靖国神社参拝など、韓国は現在日本に対して過剰なまでの反応を示す。さらに、日本製の商品やサービスに対しても過激な敵愾心を抱き、スポーツの国際試合では日本にさえ勝てばいいというような熱狂ぶりを見せる。韓国人がここまで日本を意識するのはなぜなのだろうか。
韓国駐在の新聞記者である著者は、長年の韓国生活を生かしいろいろな事象について考え、その理由を導き出した。
朝鮮王朝は大日本帝国によって併合された。抗日運動はあったけれども、その運動が実を結ぶことはなかった。その前に日本は英米ソ中ら連合国軍に降伏し、倒すべき敵が目の前から消えてしまったのである。韓国の独立は、日本という敵を破って勝ち取ったものではないのである。しかも、韓国の復興は植民地時代に整備されたインフラを利用し、朴政権の時代に日本から得た補償金で経済成長を成し遂げたのである。ここに日本に対する微妙なコンプレックスが生じる。韓国政府は日本の補償金について、あるいは日本の企業の協力について国民には一切知らせないという政策をとった。このことにより、日本に対する感情はますます悪化したというのである。日本は戦前の植民地時代の補償をしていないという主張は、ここから生じるのである。
私は嫌韓派でも親韓派でもどちらでもない。ただ、韓国の過剰なまでの日本攻撃に関しては、なぜそこまでという思いを抱いていた。本書の指摘により、そのもやもやしていたものが晴れたような気がする。
国際協調とかんたんにいうけれども、異なる文化や歴史背景をもつ国の国民同士がお互いを理解しあうというのは、そうかんたんにはいくまい。本書のような視点で分析されたものを読むことによって、自分が何を理解していなかったかわかってくる。いわゆる「目ウロコ本」といえばいいのか。
本書には「嫌韓流」にあった不快感はない。なぜなら、仮想敵を言い負かそうとする「嫌韓流」の著者に対し、本書の著者の場合は相手国のことを理解しようという姿勢の上に立ってなされる建設的な批判だからではないだろうか。
(2006年7月22日読了)