読書感想文


電撃!! イージス5
谷川流著
メディアワークス電撃文庫
2004年11月25日第1刷
2005年11月15日第3刷
定価490円

 大学に合格した僕は、変人科学者である祖父の家から学校に通うことになった。ところが、祖父は次元の断層に入ってしまったまま消失してしまったと、羊のぬいぐるみの姿をしたコンピュータ端末であるガニメーデスに教えられる。そして、祖父の家には次元断層から現れる怪物を倒すために集められた少女たちが5人暮らしていた。リコーダーで犬の姿の精霊を操る埜々香、スケッチブックに書いたものが具現化して闘うあろえ、筆で書いた四字熟語で敵にダメージを与える凌央、スケボーに乗って遊撃する琴梨、そして竹刀で相手にとどめをさす巴。日常が戦いという状況に置かれた僕は、さていったいどうすればいいんだ……。
 デビュー間もない著者が、編集者から提示されたお題……3〜6人の女の子が主人公の男のもとにやってくるという読者参加型のゲームの設定……をもとに書かれた連作短篇。戦隊ものを意識したチーム作りをしたということであるが、デビュー直後のせいか「涼宮ハルヒの憂鬱」に登場する女の子たちとキャラクターが似通っていたり、狂言回しである大学生の「僕」の個性がはっきりせず「涼宮ハルヒ」のキョンを想起させたりという弱さがある。しかも、設定やストーリーが比較的単純で、理屈をあれこれとこねまわすタイプである作者の芸風とは異なっているように感じられる。
 それでもすいすいと読ませるのは作者の文章力にあるのだと思うし、第5話の「ドッグスター」あたりは作者のSF志向がはっきりとあらわれている。
 作者の資質と読者層は少しばかりずれているように思われるのだが、対象読者に合わせた物語を作り出していくことができるというのは、やはり一定以上の力量がないとできないだろう。ただ、こういう企画ものにはあまり向いていないように感じられるのだが。

(2006年7月22日読了)


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