人気漫画家である著者が、表現することについて、自分の考えを文章で発表した。かつてビール会社の広告部に勤務していた経験から、表現とマーケティングのバランスにも言及し、なおかつ表現者として自分を殺さないようにしているということが具体的な例をもとに綴られている。
本書で著者はタイトルに「表現したい人のための」と示している。が、漫画家のこうした考えを頭に入れておいてその作品を読めば、読むだけの人であってもさらに奥深いところまでマンガを楽しむことができるだろう。
また、マンガで自分を表現したい人だけではなく、例えば小説や音楽や美術や演劇などによって表現をしている人にとっても、著者の考え方やものの味方はおおいに参考になることだろう。
従来のマンガ入門の本は、マンガの歴史やマンガを書く方法などが主体となったものであった。しかし、本書は「どう書くか」よりも「何を、なぜ書くか」に重点をおいたものである。うーむこういうアプローチの方法もあったのかと、私は唸らずにはおれなかった。
何かを表現したいと思っている人には最適な一冊である。
(2006年7月27日読了)