読書感想文


大相撲 大変
松田忠徳著
祥伝社新書
2006年9月5日第1刷
定価760円

 著者は温泉教授として著名な方だが、奥様がモンゴル出身ということで、大のモンゴル通、そして相撲通でもあるという。そんな著者が、モンゴル勢や東欧勢の活躍する現在の大相撲の状況を分析し、なぜモンゴル力士が強いのかということを立証したものである。
 モンゴル力士の強さは、その生活習慣からきている。子どものうちに馬を乗りこなし、様々なスポーツを体験してきたモンゴル力士たちと、ただ体が大きいというだけでスカウトされた日本人力士に差がつくのは当然だと、著者は書く。ま、成長期にプロとして入門してくる力士と、成長期が終ってから入門してくる学生相撲出身力士との差にもふれる。
 実際、テレビなどで幕下以下の力士を見ていても、中には丸まると太っているが下半身が弱々しい力士はけっこういるし、常に積極的に技をくり出すモンゴル力士に対し、すぐに引いたりはたいたりする相撲をとりたがる力士との差がつくのはこれまた当然だろう。
 著者は、もっと外国人力士に門戸を開くべきだと主張する。ただ、強ければそれでいいとするような外国人力士に対しては、ちゃんと相撲の伝統や文化を受け継いで礼に始まり礼に終るという美風を師匠が身につけさせなければならないとも警告している。
 また、モンゴル勢がなぜ強いのかを、ちゃんとモンゴルにまで行って研究しない各部屋の親方連に対しては勉強不足であることを指摘する。モンゴルとの親交の深い著者でなくてはできない提言だろう。
 著者の相撲への愛情が伝わると同時に、外国人力士と日本人力士が切磋琢磨することで相撲界に大きな変化が訪れるということを的確に指摘する好著である。本書によって、モンゴル力士に対する見方が大きく変わることは間違いない。

(2006年8月30日読了)


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