バブル崩壊後、消費者金融が大きく伸び、その結果多重債務者は増加の一途をたどっている。大手消費者金融業者の不祥事がここにきてやっと摘発されるようになり、大手とヤミ金の持ちつ持たれつの関係が明らかになってきている。かつて青木雄二は「ナニワ金融道」で金融会社の手口を漫画という形で具体的に描いてみせたが、「ナニ金」が描かれた当時よりも、原罪はより状況が悪化していることを、著者は本書で明示している。
大手金融業者がメガバンクとつながることにより巨大化し、中小の金融業者がのみこまれるようにつぶれ減っていく。しかし、大手は一度利用した借り手に、次々と融資枠を増やしてさらに借りるように仕向け、返せなくなった借り手にヤミ金が手を差し出す。さらに、自己破産をしてなんとか借金地獄から逃れたはずの借り手をヤミ金は狙う。借金が帳消しになっても、生活苦は改善されないのだから、結局は不法な業者から返済し切れないほどの利子つきの借金をし、蟻地獄にとらえられた蟻のようにずるずると餌食になってしまうのである。
階層化が進むにつれ、下流にいる者は浮かび上がれず、そして餌食となる。その背景には暴力団もからんでいる。著者はこのような現状を明らかにした上で、信用金庫や信用組合などのコミュニティ金融の再評価を提案する。バブル景気の時代にも過剰な融資をせず堅実に経営したおかげで破綻することのなかった信金の、扶助の精神を高く評価しているのだ。
大手金融業者が有力な広告主になったため、放送局や新聞社は消費者金融の問題に鋭く切りこむことができにくくなっているという。メガバンク系の消費者金融に対する問題提起を新聞紙上で行った著者は、広告代理店が広告出稿の停止という形で圧力をかけてきたという体験をしているという。今やマスメディアにとって、消費者金融はなくてはならない広告主なのである。
著者は書く。「消費者金融は儲け過ぎた」と。次第に法規制は厳しくなってきているが、まだまだ十分な対策はとれていない。
格差社会の実態というものを明確に描いたルポルタージュである。
(2006年9月22日読了)