新聞に掲載される世論調査の結果は、時には政局を大きく左右し、衆議院解散や内閣総辞職の原因にもなる。しかし、そんな世論調査は民意を正しく反映しているのだろうか。著者は、「世論調査」や「経済波及効果」、「都道府県別ランキング」、「視聴率」、「市場調査」などの数字の裏に隠された罠を解き明かしていく。
私も世論調査のアンケートに答えたり、選挙の窓口調査に答えたりしたことはある。正確に答えようとしても選択肢に自分の納得できるものがない場合答えに窮したこともあったし、調査そのものが自動車だのファッションだの自分の興味関心と離れたところにある調査では回答すらしなかったこともある。だから、メディアが公表する世論調査などの数字が必ずしも正解でないことはよくわかっていた。また、ビデオが普及して以降、視聴率の数字だけで実際に視聴されているかどうかをはかることができることはできないと思っている。
そういう意味では、本書が示している数字のトリックに関しては、いわばその手口を確認したという感じである。とはいえ、そんな不確かな数字であっても、メディアが公開し、それに対し何らかの分析をした結果は、それ以降の論議の論拠として使われるのは確かである。それに対して誰かがきっちりと批評をしておく必要はあるだろう。そういう意味では、新書という普及しやすい形態で数字を鵜呑みにする愚を犯さぬよう指摘する著者の姿勢は評価したい。
ただ、最終章に近くなると、数字のトリックに対する批判だけでなく、あまり数字とはかかわりのない部分での政策批判が混じってしまったのが残念である。ここでは徹底して統計というものの本質を数学的な視点で解説していくという姿勢を貫いてほしかったところだ。
(2006年9月24日読了)