読書感想文


反西洋思想
イアン・ブルマ&アヴィシャイ・マルガリート著
堀田江理訳
新潮新書
2006年9月20日第1刷
定価720円

 西洋人の東洋趣味を「オリエンタリズム」というが、著者たちは東洋人が西洋的なものを嫌う考え方を「オクシデンタリズム」と称し、その由来するところを解き明かそうと試みる。現在、イスラム原理主義者による自爆テロが行われているが、彼らが憎むのはアメリカという国家そのものではなく、アメリカが象徴する拝金主義や物質文明である。だから、イスラム教の国家であっても、「西洋」的に統治しようとする政府に対してはそれを西洋そのものと同義とみなして攻撃の対象とする。これは例えば戦前の日本でも同様の思想はあったし、ナチズムもまた同根であると、著者たちは考える。
 国際紛争を、思想的な立場から解き明かそうという著者たちの試みは、文明史というものを見つめ直す試みであり、本質的なものを直視しようとする誠実な姿勢が見られる。そういう意味では非常に興味深く読めた。著者たちは二元的な物の見方しかできず、極論に走る「オクシデンタリズム」に対して、それがいかに危険かを訴える。ただ、そう主張しながら、「オクシデンタリズム」と西洋的なものを精神的文化と物質的分明に二元化して考えているのは著者たち自身ではないのかというように感じられたのは、私の読みが浅いせいなのだろうか。
 私自身の思考の根底にある文化的背景と、著者たちの背景にある考え方の違いがあるはずで、それはどういうものなのかということを考えながら読んでいた。なぜそんなことを考えてしまったかというと、結局「オクシデンタリズム」という概念を私自身が最後まで消化し切れず、納得し切れない何かがあったからなのだろうと思う。それが何かわかれば、もっと本書から知的な興奮を与えられただろうと思うのだが、結局は「精神論」か「唯物論」かの二項対立としかとらえられなかった。それを「オクシデンタリズム」という新たなレッテルを貼ってとらえなおしてみただけに終ってしまっていると感じたのである。

(2006年9月30日読了)


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