唯一の超大国として世界に君臨しているアメリカの、そのうちに秘めた病理を、「性」と「暴力」をキーワードにして読み解く。ピューリタンたちの移民を契機に生まれた理念先行型の国家が、その理念ゆえに「性」には潔癖さを求め、それを法制化してしまったという歴史の出発点から、処女地の開拓という方法で国を急速に進めてきたために暴力的な理論が、特に遺物の排除という形で正当化されてきたという経緯など、時代を追う形で記述している。
国が大きく強力になる過程で、「性」の理想と「暴力」の現実という矛盾が肥大化していった様子が、わかりやすく手にとるようにわかる。
例えば、遺物排除のシステムとして合法化されたリンチ。このリンチの理屈をそのまま国際社会に適用しようとするのが現在のアメリカの姿だという著者の指摘は強い説得力を持つ。民主主義の国であるアメリカが、なぜ世界の暴君的な行動をとるのか。本書で示されている様々な事例は、国際社会全体がアメリカという国に対してどのように接していくべきかということについて考えるよい材料になると思う。
アメリカという国を理解するためには非常に参考になる一冊である。
(2006年11月3日読了)