読書感想文


超能力番組を10倍楽しむ本
山本弘著
楽工社
2007年3月28日第1刷
定価1700円

 「と学会」会長である著者が、テレビの超能力バラエティのトリックを解明し、子ども向きの学習読物風に展開したもの。特に「TVのチカラ」「FBI超能力調査官」などのダウジング系番組のいいかげんさと、マジックを超能力として扱う番組についてかなり手厳しい追及をしている。
 「と学会」会員諸氏により、この系列の本はかなり書かれていて、今さらという感じがしなくもないのだが、ちょうど「ニセ科学」に対する科学者側からの意見も多く出てきているので、時宜を得た出版であるとはいえるだろう。科学的なものの見方とは、思い込みを排して客観的にものごとを見つめ考えることだということを理解するにはちょうどいい教材だといえよう。
 私が面白く思ったのは、本書が学習読物のパスティーシュ的な構成をとっていることである。夕帆ちゃんと勇馬くん(UFOちゃんとUMAくんですね)が、小説家のパパに超能力番組のトリックを教わるという形ですべてが解説されるというのは、学習マンガや学習読物の定番である。それをそっくりそのままとりいれたのは、ただ単に子どもにも楽しく読んでもらいたいという思いだけではないのではないかと感じた。大人と子どもの嘘臭い会話で進む学習読物に対して、著者には含むところがあるのではないだろうか。タイトルはかの江本孟紀「プロ野球を10倍楽しむ方法」のもじりでもあるしね。これもその手のバクロ本に対するあてつけのような気がする。
 そのようないろいろな批判精神こそ、本書を支える核であると感じた次第である。

(2006年3月19日読了)


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