著者が自分のブログに書いてきた文章のうち、教育に関するものを編集し、それに高校時代からの友人の追悼文と文部科学省の私学行政課長と対談し模様について書いた文章を加えている。
学校を自由市場経済的な競争原理で淘汰しようとする行政のやり方を批判し、若者の学力低下を学校の責任ではなく社会そのものの責任であると断じ、生徒の定数を下げてでも大学そのものをなくしてはならないと主張する。自分の勤務する大学の生徒の状況や、教授たちの様子を具体的に例にとり、大学の現状を提示した上での主張だけに、説得力がある。
そういう意味ではいつもの著作同様説得力もあり面白く読め考えさせられる著作なのであるが、一点気になったことがある。それは、文科省の課長との対談で、課長の考え方が自分の主張と重なりあうことを喜んでいるのだが、課長クラスで柔軟な考え方をしていた官僚も、次官にまでなってくると硬直してしまい、課長クラスがやっていることを政治的に利用してしまうから、著者が批判するような状況が生まれてくるのではないか、ということだ。文科省にもちゃんと考えている人がいると安心するのではなく、そんな人がいるのに正反対の状況が生じていることに対してもっと強く突っ込んでいってほしかった。
一番面白かったのは、全共闘世代について書かれたもので、これはその世代の人で、なおかつ客観的な視点を保てなければ書けないものだろう。
(2006年3月31日読了)