著者はもと日刊スポーツ紙の相撲担当記者で、輪島、貴ノ花、北の湖らが活躍した時代を中心に現場で相撲を見てきている。本書は、著者が実際に体験したことを織りまぜながら、相撲ファン初心者にわかりやすく相撲の魅力を伝えようとするものである。
著者は本書で、相撲が単なるスポーツではないという事、特に神事としての相撲の魅力や、江戸時代の文化を現在に伝えるものとしての意義などを強調している。そして、相撲の持つ伝統のよさや、格闘技としての相撲の奥深さなどをていねいに伝えている。
初心者にはよいガイドであるし、私のように相撲を見始めてかなり長くなる者にとっては、手元に置いて知識の再確認をするのにも適している。挿絵の琴剣は、もと力士らしく、力士の体つきや風俗などを正確に描いていて、これはこれまでの相撲入門書にはない長所だろう。
ただ、この手の入門書は昔なら新書や文庫のサイズで刊行される事が多かったのに、本書はB6判で定価も1200円と少し高めである。よほど相撲について知りたいという人しか手にとるまい。そこらあたりに、相撲が置かれている現状がまだまだ厳しいのかなと思わせるものがある。
(2007年6月3日読了)