狂言師である著者が、DJをつとめる京都のFMラジオで語った言葉に関する思いを文章化した一冊である。「狂言ことば」「京都のことば」「今日のことば」の三部構成となっていて、特に「狂言ことば」は現役の狂言師である著者ならではの言葉に対する解釈が非常にわかりやすく説明されている。古語の持つ豊かな感覚と、そし現代人に通じる心情が伝わってくる。
「京都のことば」のそれぞれの項目の懐かしい事。私の家庭では確かに「ゴキブリ」を「ぼっかぶり」と呼んでいたし、「ゴミを捨て」たせず「ごもくをほかし」ていた。京ことばにふくまれる含蓄は、ともすれば陰湿なイメージを与えかねないものだが、著者は自分の育った土地のことばとして、その裏に隠されたニュアンスをとても好意的に解釈してみせる。ただ、京ことばも使い手によっては実にいやったらしいものになるのは確かだけれども。そこまで踏み込まない著者の、京ことばに対する愛着を感じる。
だから、「今日のことば」で無粋なことばをとりあげ、著者は悲しい思いを隠さずにいる。著者は私と同世代なだけに、その心情に共感できる部分は多い。
肩のこらない楽しいエッセイ集である。ただ、そこで扱われているテーマは実は深く重いものだったりするところが、伝統芸を受け継いで「笑い」という難関にずっと挑み続けている著者らしさなのである。
(2007年6月8日読了)