読書感想文


近江から日本史を読み直す
今谷明著
講談社新書
2007年5月20日第1刷
定価740円

 中世日本史研究の第一人者である著者が、近江国の歴史を古代から近世にいたる長いスパンで概括したもの。特に、近江甲良の大工や僧侶などの宗教家であまり一般的ではない人物に多くページを割いており、近江国の特別な風土をうまく象徴させている。
 もっとも、私はいつもの著作のように独自の視点で歴史を洗い直したものを期待してしまったので、そういう読み方をした場合は拍子抜けしてしまう。あくまでも近江国を中心にした通史を書き綴ったもので、もともとは新聞連載であったということもあり、一般的な歴史解説書という感じに仕上がっている。タイトルには「読み直す」とあるが、そこまで画期的な内容ではない。
 日本史上、近江国が果たしてきた役割を知るには絶好の一冊。ただ、それ以上のものを求めたい人には物足りないかもしれない。

(2007年6月23日読了)


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