読書感想文


新選組 二千二百四十五日
伊東成郎著
新潮文庫
2007年6月1日第1刷
定価552円

 本書は新選組の研究家である著者が、組織の誕生から副長土方歳三の死までを新選組の存在期間と考えて、その間の新選組の活動や動向を細かな項目をたてて説明したものである。もちろん新たな発見や表面に出なかった内情なども様々な記録や証言に基づいて収録している。
 ドラマや映画、あるいは小説などで新選組に触れて一定のイメージを持っていたとしても、それはあくまで創作されたものに過ぎない。私は大河ドラマの放送時に新書での解説書をいくつか読んだりした。ただ、新選組を歴史的に位置づけようとすると、これがなかなか厄介なのである。思想は尊王攘夷であるにもかかわらず、幕府の配下にあって同じ思想の脱藩浪人たちを取り締まり、坂本竜馬暗殺の濡れ衣まで着せられてしまう。なんとなく歴史の流れに押し流されてしまった徒花のような存在であったりする。
 本書を読むと、彼らの出自などがそのようにさせたのかという感じがする。隊士の多くは身分的に低く激動の時代に何か動かねばならないが動き方がわからなかった者が多いように感じられるのである。
 著者は細かなエピソードの積み重ねでそれら新選組の実像をあぶりだしていく。対極的に知るには中公新書などを読むべきであるが、少しでも知識が得られ、様々な解釈に戸惑っているような読者には本書は最適だろう。著者の新選組に対する思い入れが少し鼻につく部分がないではないが、そういう思いがあればこそこれだけ細かな検証ができたのだともいえよう。

(2007年8月26日読了)


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