日本は議院内閣制だから首相の権限が弱く、大統領的な首相にすべきだという論をたてる人がいる。しかし、著者はそのような考え方が誤解であることを示し、議会の多数の支持を背景に権力を行使できる議院内閣制の首相の権限の大きさを示してみる。
それならば、日本でそのような間違った論説がまかり通ってしまうのはなぜか。それは、国民の多くが「議院内閣制」と思っているものが実は「官僚内閣制」だからなのである。
著者は諸外国との違いを提示するとともに、日本の政治制度の特殊性を明らかにし、現行の憲法下で政府はどうあるべきか、議院はどうあるべきか、官僚は、改革すべき制度は……といったところを明らかにしていく。
著者の示すモデルは一見理想主義的に見えるかもしれないが、現実を見据えていかにスムーズに国政が動くかを模索したものである。政治の仕組みがややこしくてわかりにくいという人は、本書を読むべきだ。本来もっとわかりやすいはずの仕組みを複雑にしているものが何か。真の意味での「改革」や「政治の再生」とはどういうものか。本書から見えてくる制度的なひずみについて自覚し、選挙によって変えていくべきだという著者の思いが強く伝わってくるのである。
(2007年9月16日読了)