読書感想文


米朝よもやま噺
桂米朝著
朝日新聞社
2007年12月30日第1刷
定価1300円

 上方落語界初の人間国宝となった著者に、ABCラジオが昔話を存分に語ってもらうという企画、「米朝よもやま噺」。それを朝日新聞大阪本社では毎週1回の連載という形で「米朝口まかせ」と題して文章化してきた。本書はそのうち2005年9月〜2007年9月までの掲載分をまとめたものである。
 これまでの著者は系統だてて上方文化や落語について自ら筆を取りまとめてきた。しかし本書は思いつくままに語ったことを聞書きという形でまとめてある。それだけに肩のこらない語り口がそのまま文章となっており、読みながら著者の声が聞こえてくるような肩のこらないものになっている。
 しかし、だからといって内容まで手軽なのではない。現在は失われた上方文化の話や、著者しかもう覚えている人がいないであろう先人の思い出、こぼれ話など、長年蓄積されてきた貴重な記憶がつまっているのである。
 本書では松葉家奴の奇人ぶり、桂南天、橘ノ円都などの著者が入門した当時すでに古老となっていた師匠たちの芸、桂ざこば、桂小米朝、桂小米ら弟子たちのエピソードと伝えたい思いなどが印象に残る。
 また、各回に付けられている写真も、資料としては非常に貴重なものが多く、その写真を見ているだけで楽しめる。「かもか」の顔をしている五代目笑福亭松鶴の写真や柳家三亀坊の立体紙芝居などこのような企画でなければなかなかお目にかかれないものがたっぷりつまっている。
 連載はまだまだ続いている。2冊目、3冊目が出るよう著者には今後もずっと元気で語り続けてほしい。

(2008年1月4日読了)


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