読書感想文


ちりとてちんの味わい方
桂枝光の落語案内1
桂枝光+土肥寿郎著
寿郎社
2007年9月7日第1刷
定価1000円

 五代目桂文枝門下で、若い頃は桂小つぶの名でタレントとして活躍し、子どものアトピーの治療のために居を北海道に移した著者と、かつて東京の出版社で編集をしていたが郷里に帰って独立し小さいながらも出版社を立ち上げた発行者の共同作業による落語入門書である。
 第一部は落語という芸そのものについての紹介。第二部は「ちりとてちん」「祝のし」「勘定板」「動物園」「相撲場風景」「道具屋」「桃太郎」「犬の目」「阿弥陀池」「狸さい」の十席を著者の語り口を生かしながら紹介する。第三部では発行者が著者にインタビューするという形で入門から初高座までのエピソードを聞き書きしながら自然に落語家の修業とはどういうものかがわかるという仕組みになっている。
 子どもでも読めるように大き目の文字でふりがなをうつなどの配慮をしながらも、大人にも楽しく読めるように作られている。また、所作や道具などの写真をふんだんに入れ、視覚的にもわかるように作られているのが特徴である。インタビューの下段には著者たちが行っている地域寄席の段取りを連続写真で掲載してあるが、これまでの落語入門書にはない試みであり、特に上方落語は天満天神繁昌亭ができるまで定席がなく、現在でもこのような地域寄席が落語家を育てる役割を担ってきたので、東京落語中心の入門書ではどうしても抜け落ちてしまうところである。
 落語の入門書は数多いが、地方の小出版社ならではという作りになっていて好感がもてる。テレビドラマなどから落語人気が高まる中で、このような草の根的な活動が入門書という形で実を結んだことに敬意を表したい。
 第2巻以降はどのような展開をしていくのかも楽しみである。

(2008年1月5日読了)


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