読書感想文


テレビ霊能者を斬る メディアとスピリチュアルの蜜月
小池靖著
ソフトバンク新書
2007年12月28日第1刷
定価700円

 著者は宗教社会学者。本書のタイトルはかなり物騒であるが、内容はそう過激なものではなく、現在の「テレビ霊能者」の代表である2人、江原啓之と細木数子がなぜ人気を博しているのかという理由を分析、解釈したり、過去に人気を呼んだ「テレビ霊能者」についてどのように人気があったかを振り返ったりした上で、メディアと霊能者の親和性についてていねいに解説したものである。
 江原・細木両名の「テレビ霊能者」の共通点として、著者は「祖先を礼拝せよ」と必ずアドバイスすることをあげている。オーラと前世、そして占いという違いはあっても、伝統的宗教から大きく逸脱したことは言っていないのである。
 ではなぜこのような「テレビ霊能者」がブームになるのか。それは、地域の共同体の力の低下、既存の宗教団体へのマイナスイメージなどにより、既存の宗教には頼りたくないが、しかし自分や自分の近くにいる者の「救い」を期待できない者が新しい「宗教」として「テレビ霊能者」を信じてしまう。「テレビ霊能者」は「宗教を否定する宗教」という存在なのである。
 オウム真理教事件以後、組織だった新宗教に所属するということへの抵抗はかなり強まったといえる。しかし、だからといって宗教的なものに対する需要がなくなったわけではない。「テレビ霊能者」はそこをうまくすくいあげているのである。
 問題はこのような「テレビ霊能者」のブームにのって展開される霊感商法などの犯罪である。前世や霊などを抵抗なく受け入れる素地がテレビでできている人たちは、霊感商法などの詐欺師たちにとってはカモといっていい。著者はそのような問題が起きることに対する警告をする。
 さらに著者は「メディアが作り出す現実」に対する警告を発する。テレビ制作者は視聴者を馬鹿にしているといわれるが、その見下した相手の生み出す視聴率に生活を左右されてしまうという袋小路に陥っているのだ。
 感情的な批判本とは違い、冷静な分析に基づく警告というところが本書の特長である。「害がなければ誰が何を信じてもいいではないか」という無責任な言説を軽く封じる。そしてこのような宗教的なものを求める層はなくなることはないだろうとした上で、インターネットなどによる新たな宗教的なものの出現を予測するのだ。
 扇情的なタイトルに警戒して手に取らなった人もいるだろうが、本書は理性的に「テレビ霊能者」と既存宗教に共通するものを提示し、現在のブームが決して特異なものではないことを解説したものなのである。だから、本書は「宗教」そのものに対して読者が考えるきっかけとなるだろう。

(2008年1月13日読了)


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